代表弁護士 宇賀神 徹 (うかがみ とおる)

自己破産では借金が免除される代わりに、大切な自宅を手放すことになります。

しかし、個人再生では自宅を手放すことなく、減額された借金を返済していくことができます。

ただし、自宅を守るためには個人再生の申立てと同時に「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」の申立ても必要です。

住宅ローン特則はどういった特則であるのか、利用条件など詳しく解説していきます。

住宅ローン特則とは

家を購入する際には、何十年という長期間のローンを組んで返済を続けていくことが大半です。

しかし、給料の減額やボーナスカットがあると、返済が難しくなってしまうでしょう。

ローンの返済が滞ってしまうと、自宅が売却されることになってしまいます。

そこで、個人再生の住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンはこれまで通りに支払いながら、他の債務のみを整理することができるようになります。

住宅ローン特則が存在する理由

任意整理では整理する債権を選ぶことができますが、個人再生や自己破産では一部の債権者のみを除外して債務整理することはできません。

債権者は平等に扱われなくてはいけないという決まりがあるからです。

それにも関わらず住宅ローン特則が存在するのは、住宅ローン会社と他の債権者との間で不公平が生じることがないからです。

自己破産して家が売却されれば、住宅ローン会社が優先的に配当を受けます。

売却価格がローン残高を上回っていれば他の債権者も配当されますが、下回る場合には配当されないため、他の債権者には住宅の売却は影響を与えないことから特則が存在するのです。

住宅ローン特則を利用するメリット

住宅ローン特則を利用することで、自宅を残しながら他の借金を減額できます。

また、住宅ローン以外の借金がない場合でも住宅ローン特則を利用することは可能です。

住宅ローン特則を利用しても、住宅ローン自体は減額されることはありませんが、住宅ローン特則のメリットを受けることができます。

住宅ローン特則のメリットは以下です。

住宅ローンの返済を最長10年間延長できる

住宅ローン特則の最大のメリットは、住宅ローンの返済期間を最長10年間延長することができるという点です。

更には、再生期間である3~5年間に元金の一部返済分の猶予を受けられる可能性もあります。

期限の利益の回復ができる

通常であれば、住宅ローンは3カ月以上滞納することで保証会社が代わりに一括弁済を行うので、債権が銀行から保証会社へと移動します。

そうすると、保証会社によって家が競売にかけられてしまいます。

しかし、住宅ローン特則によって保証会社が代わりに弁済をする前の状態に戻すことができます

このことを期限の利益の回復と言います。

住宅ローン特則を利用する条件

個人再生と同時に住宅ローン特則を利用したい場合、一定の要件を満たしている必要があります。

誰でも受けられる特則というわけではないので、手続きの前に確認しておきましょう。

法人ではなく個人した利用することができず、その他以下の条件を満たしていなくてはいけません。

本人の所有住宅であり、居住用であること

個人再生を申立てた時点で、債務者本人の所有住宅である必要があります。

誰かと共有している住宅も含まれるので、夫婦で共有している場合であれば、再生申立人の抵当権が設定されていれば利用できます。

また、自身の居住用の住宅でなくてはいけないので、別荘や事務所目的の建物などは除外されます。

住宅購入や建築のための分割ローンであること

住宅を購入したり建築するための分割払いの住宅ローンでなければ住宅ローン特則は利用できません。

家電などを購入する際に組むローンは対象外となりますが、住宅ローンの借り換えの場合には住宅ローンとして扱われます。

保証会社などの抵当権が設定されていること

抵当権が設定されていない場合には、住宅が担保になっていないということになります。

住宅ローン特則を利用するには、保証会社や銀行の抵当権が設定されていなくてはいけません。

また、いくつか不動産を所持しているような場合には、対象の住宅以外の不動産の住宅ローンなどの抵当権に後順位抵当権者がいないことが条件となります。

保証会社による代位弁済から6ヶ月を経過していないこと

住宅ローンを滞納すると、保証会社が住宅ローンの残高を全て立て替えることになります。

そうすると、ローンの債権が銀行から保証会社に移ることになるのです。

このことを代位弁済と言いますが、代位弁済から6ヶ月を過ぎてしまうと住宅ローンの特則は利用できません

まとめ

自宅を残しながら借金問題を解決したいと考える人は多いものです。

自宅が売却されてからでは取り戻すことが難しいですし、借金は放っておいも利子が増える一方です。

住宅ローンを滞納してしまっている人や、住宅ローンの返済が難しいと感じている人は少しでも早く弁護士に相談することをおすすめします

当事務所では債務整理に強い弁護士が、自宅を手放すことなく借金の負担を少しでも減らすことができるよう尽力致します。

まずは無料相談よりご相談ください。

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